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大好きなピアニスト「Lang Lang」の自伝 [Book & Movie]



奇跡のピアニスト郎朗自伝 一歩ずつ進めば夢はかなう

郎朗+デイヴィッド・リッツ 著/野澤敦子訳
WAVE出版
本体1,800円+税


6月14日に27歳になる青年の自伝と聞いて、「郎朗(=ラン・ラン=Lang Lang)」の名前を知っている人も、知らない人も、「そんなに若くて自伝?」と、少なくとも疑問を抱くのではないかと思います。ラン・ラン・ファンの私でさえ、最初はそんな風に思ったのですから…。

ラン・ランは中国出身のピアニスト。昨年の北京五輪開会式でも演奏したので、知っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

彼の音楽は不思議な力を持っています。ある時は魂を揺さぶられ、またある時は元気の源をもらえ…多彩な色彩の引き出しを自在に操れるピアニストです。そして、この若さでありながらの表現力! まるでもう「巨匠」の域に達しているような…。どんな経験を積めばこんな音楽を響かせることが出来るのだろうと常々感じていました。

そして、この本を読み、納得しました。文化大革命という一つの大きな歴史を終えた中国という国の中に潜む魔物がそうさせたとでも書いたら良いのでしょうか…!?

「競争社会」のまっただ中の中国という時代背景。ラン・ランのお家でも「ナンバーワン」になるということが重要視されていました。ピアノの世界でナンバーワンになるということ。それがどういうことなのか…。毎日何時間も繰り返される練習。それはそれは半端な量ではありません。想像を絶します。しかも、お母さんと引き離された生活を強要され、お父さんの監視下での練習の日々が続くのです。

そしてある時、お父さんは練習時間に遅れ、自分の言うことを聞かなかったラン・ランに詰め寄ります。
 
「お前は嘘つきの怠け者だ! 身の毛がよだつ。お前なんか生きてる価値がない。まったく価値がない!」
 「恥をさらして生きるよりいますぐ死ぬんだ! お前にとっても、私にとってもそのほうがましだ。最初にお前が死ね。それから私も死ぬ。」
 そして、
「この薬を飲め!」「いますぐ三十錠すべて飲み込むんだ。すべてが終わり、お前は死ぬ!」
 ……

このシーンはまだ続きます。ベランダから転落死までさせようとするのです。狂気に満ちたこの場面は、読んでいてめちゃくちゃ緊張しました。これ、殺人未遂ですよ。本当に信じられない光景です。

コンサートでラン・ランと共演したお父さん(二胡奏者として)を知っているだけに、あまりにもショッキングでした。本当にあのお父さんの言葉…!? とてもにこやかで優しそうに見えたけど…。
ナンバーワンになることがそんなに大切なことなの…? 音楽に勝ち負けはないと思う。私の頭はちょっと混乱しました。
 
でもこれは実話…。
中国という国の中ではこんな「競争社会」による「スパルタ」的な教育は日常だったようです。

当然お父さんを信じられなくなってしまいますよね…。それでも彼は必死で乗り越えていくのです。まるで神に選ばれた子のように、要所要所での必然的な出会いも助けてくれました。

あ、でもこんな緊張したシーンばかりではありません♪ フフフって思いながら読める場面ももちろんあります! ラン・ランは普通の男の子の一面もちゃんと持っていました。アニメが大好きで「トムとジェリー」や「ドラゴンボール」を見たり、「トランスフォーマー」を集めていたり…。

とはいえ、波瀾万丈な幼少時代。。。まだ20代なのに、日本で呑気に暮らしている私などの数倍もいろいろなことを経験しているかのようです。多分…彼の音楽の秘密はそこなのでしょう。ピアノが心から好きで、心の痛みも知り、人が80年かかって得られるような経験をすでに一通りしてしまったのかもしれません。

ただのサクセス・ストーリーではありません。昨年出たものですが、まだまだ市場に出回っている本です。クラシック音楽を知らない人でも、読み進めていくことは容易だと思います。落ち込んだ時とか、きっと勇気をもらえると思います。

そして何より、今現在、彼の音楽に触れる機会は幸いとても多く巡ってきます。毎年のように日本を訪れ、ドイツ・グラモフォンからCDも発売され、タイムリーに彼とふれあうことが出来ます。同時代を生きていること自体感謝したい、私の中ではそんな気持ちになる演奏家の一人です。

追記:ラン・ランはなんと「オレンジ」でショパンの「黒鍵のエチュード」が弾けてしまうという芸当も持っています♪ 見たい人はこちらでどうぞ(笑)。


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